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EM有機栽培の和紅茶づくり体験!/宮ザキ園

無農薬・有機栽培でEMを活用しているというご縁で出会うことができた、創業190年のお茶の問屋さんである「宮ザキ園」さん。
紅茶づくりの体験を通して、お茶の魅力と、自然、歴史を感じました。

2015年10月8日(木)愛知県岡崎市 産地問屋「宮ザキ園」
取材スタッフ:植村

お茶の木を植える

宮ザキ園6代目 梅村さん:
今、目の前に生えているお茶の木は、なんと樹齢150年。
遠くに見えるあの山、本宮山(ほんぐうさん)という地元の山に入って、お茶の種を拾ってきた昔の人が、ここに種を植えて育てたんです。種から植えると育つのに時間がかかるから、今では挿し木で増やすのが一般的だけど、それだと40年か50年くらいしか木がもたないんですよ。種から育てたほうがしっかりと大地に根を長く深く伸ばすから、自然災害が来ても倒れない、枯れない。だから150年経ってもこうしてここに在るんです。

茶摘みをして気づくこと

本宮山から取ってきた種といっても、みんな同じ品種というわけではないのです。だから、葉っぱの大きさや形、ギザギザの様子、新芽の出るタイミングなんかがみんな違うってことに気がつきます。個性がすごくあって面白い!

梅村さん:
手で摘むのはすごく時間がかかるので、効率化して安価に手に入るように、ほとんどのお茶は機械で一定の高さ以上の葉をばっさりと刈り取ります。そうすると、柔らかい新芽も、硬い葉も、枝もまるごと刈り取られてしまいます。それらを選別なんてしていられないから一緒くたにして加工してしまいます。刈り取った瞬間から断面から発酵が始まるので、機械刈りしたのと手摘みしたのでは、味わいがぜんぜん変わってきます。木にとっても、手摘みしたほうがダメージがないですしね。だけど、そうやって丁寧に摘むと、値段は高くなってしまいます。

品質と効率はやはりここでも反比例するということですね。
自然の恵みや天と地の気のエネルギーなどを昔は繊細に感じ、「わびさび」に感動することができたけれど、それは、現代では時間とお金をかけなければ手に入らない貴重なものに。「高級な感動」とでも言いましょうか。
  • 紅茶にするために新芽の部分の葉っぱ3枚くらいを摘みます。
    作るお茶の種類によって摘み方が違うって知ってました?
  • これ、お茶の花です。椿の花に似てますね。
    お茶の木は、ツバキ科だって知ってました?
  • なんと、花が散って実ができるのに1年もかかるそうです。つまりこの実は、昨年咲いた花。お茶って、ゆったりしてるんですね~。
  • 無心になって摘みました。かごにいっぱいになったけど、これでどれくらいの紅茶ができるかな?

宮ザキ園190年の中での農薬の時代とは

このお茶の木の樹齢は150年!
昔の人が、山から種を取ってきて、ここに撒いたのだそう。歴史を感じます。
190年前といえば、単純計算で1825年だから江戸時代後期。徳川幕府が大政奉還する約40年前。そんな時期にはもちろん農薬や化学肥料なんて無かった。きれいな水と空気の中で、自然のままに栽培をしていたのだから、今よりもっと美味しいお茶を飲んでいたかもしれませんね。
農薬が入ってきたのは第二次大戦後。だから、60~70年前くらいの戦後復興の頃に海外から入ってきて、宮ザキ園さんももちろん農薬・化学肥料の栽培時代に突入します。そして、約50~60年ほど経った2003年に有機JASの認証を取得する無農薬栽培に転換しました。
産地問屋「宮ザキ園」6代目の梅村さんが、いまから茶摘をするお茶の木を紹介してくれます。
梅村さん:
祖父が、ちょうど農薬・化学肥料の栽培が主流になった時代の人です。当時は健康にいいとか悪いとかそんなことは考えていない。ただ自分のからだが農薬の害でどうなるのか、ありのまま見せてくれた。そういうことです。

ここ岡崎は中山間地なので、他の農園との間に山があるから農薬が風に乗って飛んでくることがありません。だから、自分のところで農薬を使わなければ、茶葉が農薬に汚染されることはないので、有機栽培が可能なんです。

茶葉を揉んで発酵させる

摘み取ったあと、時間を置いて萎れさせた茶葉を、手で揉んで葉の中にある水分を外に出していきます。お茶の葉っぱに含まれる色素が空気に触れて酸化することで発酵が進んで、赤っぽくなるのが紅茶と呼ばれる状態なんだそうです。

摘み取ったら酸化発酵がどんどん進んで色が変わってしまうので、緑茶は発酵を止めるために蒸しているから、緑色のままなんだそうです。知ってました?
しばらく揉み続けると、手にくっつく粘りが出てきました。これで38度くらいに温めれば発酵が進んで色が変わっていきます。

手についている微生物が人によって違うので、自分で揉んだ茶葉は自分のオリジナルの発酵になります。できあがりが楽しみです。

紅茶の味わいは千差万別

空気を含んだお湯の対流によって茶葉が自然と広がって味と香りが引き出されるのをそっと待ちます。
大雑把にまとめてしまえば、お茶の木の種類はアッサム系(木は寒さに弱く、茶葉の発酵が強い)と、中国系(木は寒さに強く、茶葉の発酵は弱い)に分かれるそうで、日本に渡ってきたお茶の木はほとんど中国系なんだとか。

紅茶ソムリエ(正式にはティーマスター)野口さん:
日本では「紅茶」と一言でくくってますが、紅茶という各一の製法があるわけではないんです。気温の高い地域では、手摘みした茶葉は背中のかごの中であっという間に発酵しちゃいますから。美味しい紅茶というのは、低温で時間をかけてゆっくりと発酵したものです。
5種類の紅茶を味比べ。和紅茶がこの中で一番渋みがなくて甘みがあってやさしい味でした。
今回、5種類の紅茶を同じ条件でいれてもらって、飲み比べをしました。発酵の強いアッサム系品種の紅茶(スリランカのウバ)が、渋み成分のタンニンが多いようで、舌がピリピリとしびれるくらい渋みのある紅茶でした。中国のキームという茶葉は、独特の香りが楽しめる高級な紅茶ですが、どれも渋みがそこそこあって、だんだん時間が経って冷めてくると後味が苦く感じます。
皆さんは渋みが強いほうが好きですか?
唯一、渋みの少なく、甘みが感じられてほっとするなあと思ったのは和紅茶でした。宮ザキ園さんの「わ紅茶」は、わざと渋みや苦みが少なくなるように半発酵で仕上げて、マイルドでやさしい味にしてあるのだそうです。

手づくり体験の和紅茶

みんなそれぞれ家に持ち帰り、乾燥させてでき上がった和紅茶。
茶葉の香りをかぐだけでも、心が落ち着きます。

爽やかな秋空の下、150年の歴史を重ねた木の柔らかくてかわいい新芽をこの手で摘み取り発酵させた時間が、ぜ~んぶ抽出されて味わう至極の紅茶です。
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