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トランス脂肪酸って食べちゃだめなの?

トランス脂肪酸 米国で全面禁止の方針。 健康への悪影響を理由に。


2013年11月7日、米国食品医薬品局(FDA)がトランス脂肪酸の使用を全面的に禁止する方針を固めたと発表しました。

欧米では1950年〜1960年頃、トランス脂肪酸を含む食品であるマーガリンの摂取量増加の時期と冠動脈性心疾患の増加の時期が一致したため、マーガリンの過剰摂取による心筋梗塞の増加が疑われ始めました。その後、世界中で様々な疾患とトランス脂肪酸の関連性が研究されてきました。

 

トランス脂肪酸ってなあに?






まず「脂肪酸」というのは、油脂を構成する部品のことです。図1を見てください。簡単に言うと、動物性脂肪に含まれる脂肪酸は、飽和脂肪酸という種類で、酸化に強く、常温で固体です。一方、植物油の脂肪酸は不飽和脂肪酸という種類で、酸化に弱く、常温で液体です。この融点の違いは、形がまっすぐか、くの字に曲がっているかで決まります。トランス脂肪酸というのは、特定の脂肪酸の名前ではなく、グループの総称です。不飽和脂肪酸の一種ですが、直線に近い折れ曲がり方をしていて、常温で固体になります。なぜ、トランス脂肪酸が問題になっているかというと、天然にはあまり存在せず、工業的に油脂を加工する際に生じる不自然な脂肪酸だからです(※)。

※自然界において、反芻動物の胃の中で微生物によって生成されるトランス脂肪酸もあります。この反芻動物由来のトランス脂肪酸は、工業由来のものと区別して研究された結果によれば、いずれの疾患との間にも関連性が認められていないので、今回は肉類や乳・乳製品類に含まれるトランス脂肪酸についての説明を省略しました。

 

トランス脂肪酸は どうやって生じるの?

①硬化油(加工油脂)をつくる時
 簡単に言うと、常温で液体である油を固体にすることです。例えば、常温で液体の植物性油脂を加工してマーガリンのように固化させます。その製造方法は19世紀末にヨーロッパで開発され、第二次世界大戦によるバター不足のため、工業的な生産量が飛躍的に増えました。

②食用植物油をつくる時
食用植物油とは、菜種や大豆、トウモロコシなどからつくられるサラダ油などのことです。食用植物油は油脂中の好ましくない臭い成分を脱臭して製品化されます。脱臭のため、200℃以上の高温で処理される際にトランス脂肪酸が生じます。ちなみに、家庭で調理する油の加熱温度(160℃〜180℃)ではほとんど生成しません。

 

トランス脂肪酸は、どんな 食べものに含まれているの?



食品包装の裏に書かれている成分表示で言うと、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、食用植物油、加工油脂と表示されているものにトランス脂肪酸が含まれています。その含有量は銘柄によってかなりのばらつきがあります。食品としては図2のようなものに多く含まれています。ショートニングはバターやラードの代用品として広く利用されていて、菓子類にはたいてい入ってます。サクサクとした触感を出すのに使われます。


 

トランス脂肪酸には どんな健康リスクがあるの?

トランス脂肪酸は、その他の脂酸と同じように99%が体内に吸収されます。研究の結果、トランス脂肪酸を過剰に摂取したときにリスクが高まるのは、次のような疾患です。(図3)



 

私たちはどれくらい トランス脂肪酸を食べているの?

複数の調査で結果にばらつきがあるので正確なことはわかりませんが、日本の国民平均では1g前後/日です。しかし、個人差がかなり大きく、ある人は3g/日も摂取しています。また、外食や弁当で、1食あたり0.5gを超える量を含む食品も流通していますので、どのような食事を選択するかが重要だということです。では、何g以下なら良いのかという基準値を知るにはちょっとした計算が必要で、実際自分が食べた量も容易に計算できないので、今はリスクを理解した上で、トランス脂肪酸を多く摂取する可能性の高い食事を避けることです。


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