- #医師コラム
カラダの健康はお口の中から
知っていますか?“8020運動”
“8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動”をご存知でしょうか。80歳になっても歯を20本残しましょうという運動です。成人の歯は親知らずを除いて28本です。0という数字は、食べ物を何でもおいしく食べられる目安です。 20本以上の歯をもつ高齢者はそれ未満の人に比べ、おいしく食べられ、楽しく会話し、活動的で、寝たきりとなることも少ないなど多くの報告がなされています。
「健康寿命」という考え方
寿命の考え方のひとつに「健康寿命」があります。「健康寿命」とは寝たきりなどの障害で介護を受けることなく、自立して元気に暮らすことができる年数のことをいいます。
現在では平均寿命と健康寿命の間には8年ほどの差があり、残念ながら、平均寿命が延びても、健康寿命は延伸していません。いかに長生きするかではなく、いかに健康寿命を延ばすかが問題であり、健康生活を維持する上でも、お口の健康が大きく関わってきます。
現在では平均寿命と健康寿命の間には8年ほどの差があり、残念ながら、平均寿命が延びても、健康寿命は延伸していません。いかに長生きするかではなく、いかに健康寿命を延ばすかが問題であり、健康生活を維持する上でも、お口の健康が大きく関わってきます。
噛み合わせ改善が 「健康寿命」に影響
新潟大学歯学部の宮崎秀夫教授の研究では、現在歯がなくとも良好な義歯で噛み合わせがうまく行われれば、全身の健康は十分維持されるという調査結果がでました。しかし、歯数が少なく、不良な義歯や義歯の入っていない人は全身の健康に非常に悪影響を及ぼしており、口腔機能の改善が全身の健康に大きく関わっていることを示唆しています。
当医院で行ったアルツハイマー病患者さんと健常高齢者の方との残存歯数の比較調査で明らかな結果が出ました(下表)。アルツハイマー病患者さんは残存歯数が少なく、しっかり噛めず、脳内血流量が減少し、有害ミネラルである水銀(Hg)の蓄積量が多くなります。
一方、健常高齢者の方はしっかりと噛むことができたため、脳内血流も正常値に近く、水銀量も少ない状態でした。水銀の脳内蓄積量の増加に伴うアセチルコリン(Ach:脳内血流量に関係する神経伝達物質)の減少は、アトピー、ガン、アルツハイマーに影響するといわれており、噛むことの重要性が示されました。
当医院で行ったアルツハイマー病患者さんと健常高齢者の方との残存歯数の比較調査で明らかな結果が出ました(下表)。アルツハイマー病患者さんは残存歯数が少なく、しっかり噛めず、脳内血流量が減少し、有害ミネラルである水銀(Hg)の蓄積量が多くなります。
一方、健常高齢者の方はしっかりと噛むことができたため、脳内血流も正常値に近く、水銀量も少ない状態でした。水銀の脳内蓄積量の増加に伴うアセチルコリン(Ach:脳内血流量に関係する神経伝達物質)の減少は、アトピー、ガン、アルツハイマーに影響するといわれており、噛むことの重要性が示されました。
噛み合わせが頭痛・肩こりの原因?!
歯科領域においても頭痛、肩こり、腰痛、不眠などの不定愁訴を訴える患者さんが多くいます。噛み合わせは全身のバランスを保つ上で重要な役割を果たしていますが、噛み合わせがズレると頭部が傾き、身体の重心が変化し、それが筋肉や骨格、神経まで影響を与え自律神経(※)、内分泌系、免疫系にまで影響を与えます。また、脳内血流量の低下は、睡眠障害の原因となり、常に身体が緊張状態の為、くいしばり、歯軋りが起こりやすく、後頭部筋肉群の過緊張が生じ、頭痛、肩こり等の原因にもなっています。
※ 自律神経:自律神経には、交感神経と副交感神経があります。日中は交感神経が優位になって血管を収縮させ、脈拍が上がり、呼吸数も増えます。反対に、睡眠時や食事中などは副交感神経が優位になって血管を拡張させ、脈拍をおさえ、呼吸数を減らし、消化を促進します。このように、交感神経と副交感神経がバランスよく働くことが大切で、バランスが崩れると様々な病気を引き起こします。
患者さんの多くにミネラル、特にマグネシウム不足で交感神経緊張状態になっている方がおられます。田中佳先生もEM健康アドバイスで指摘されていましたが、減塩が大きな問題となっています。
ストレスが大きな要因となる交感神経緊張状態は血流障害を起こし、冷え性・低体温症の原因となります。体温が1℃低下するだけで、免疫力が37%、基礎代謝が12%、体内酵素の働きが50%まで低下し、ガン細胞やウイルスの活動が活発になり、病気になりやすくなります。マグネシウムは神経系やエネルギー代謝に関与するため、マグネシウムを豊富に含む天然塩を摂取させて自律神経系の安定を図るとともに、歯磨きにも応用し、効果を上げています。
予防の基本はプラークコントロール!
歯を失う原因の約9割をむし歯と歯周病で占め、特に歯周病は30代後半から発症・進行しますが、歯周病は重症化するまで自覚症状に乏しく、放置されがちで、50代後半から歯が抜け始め、急速に噛み合う箇所を失い、口腔機能が低下していきます。歯周病は口の中の病気だけでなく、全身の健康にも大きく影響し、糖尿病や、心臓病、脳梗塞、肺炎、骨粗しょう症、妊娠時のトラブルの原因にもなっています。
むし歯や歯周病予防の基本はプラークコントロールです。プラーク(歯垢)中の細菌が産生する「酸」や「毒素」がむし歯や歯周病の主な原因となり、プラークコントロールをしっかり行って細菌の数を減らすことで予防することが出来ます。ただ、歯の表面に付着したバイオフィルム(プラークの塊)は簡単な歯磨きでは取れず、磨き残しがでるため、歯科医院での専門的なクリーニングが必要です。
定期健診においでになる患者さんの多くが、お元気で健康生活を維持されています。健康寿命を延伸するためにもお口の健康にお気を付けください。
定期健診においでになる患者さんの多くが、お元気で健康生活を維持されています。健康寿命を延伸するためにもお口の健康にお気を付けください。
関連する読みもの
-
トランス脂肪酸って食べちゃだめなの?
-
Dr.岡野寛のEM健康アドバイス ~発酵食品の良さ~
-
Dr.田中佳のEM健康アドバイス ~明るく楽しい子育てをしよう~
-
健康の決め手は微生物!
-
安眠を探る Part 1
-
感染症対策のポイント
-
安眠を探る Part 2
-
インフルエンザとの付き合い方
-
人生100 年時代は 「口腔の健康」こそ最大の財産
-
花粉の季節の前に知っておきたいアレルギーと食用油の話
-
塩を控えすぎていませんか? ~予防医学から見る、減塩の弊害~
-
Dr.田中佳のEM健康アドバイス~脂質は良い?悪い?~
-
Dr.田中佳のEM健康アドバイス ~身体を温めることの善し悪し~
-
Dr.岡野寛のEM健康アドバイス ~健康長寿の秘訣~
-
家庭でできる熱中症対策~残暑もあるよ、熱中症!~
-
Dr.岡野寛のEM健康アドバイス 「体の健康を整える」 ~「菌ケア」と「バイオティクス」のお話~
-
Dr.田中佳のEM健康アドバイス~認知症になりやすい生活をしていませんか?~
-
Dr.岡野寛のEM健康アドバイス~ 日本人のこころとからだを支える「お米」のお話~
-
高血圧について考える(前編)
-
Dr.田中佳のEM健康アドバイス~お肌のメンテナンス~
-
Dr.田中佳のEM健康アドバイス~地獄の沙汰も菌次第?~
-
代謝を高めるミネラルの働き
-
高血圧について考える(後編)
-
人の感情をコントロールする微生物!?
-
健康にかかわる「おつうじ」の話