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高血圧について考える(後編)

前編では、「そもそも血圧とはどういうものなのか」「適正な血圧とは」についてお伝えしました。後編では、「血圧を健全に保つ方法」について、ご紹介します。

あなたは本当に高血圧?

血圧が高すぎたり低すぎたりするとどういう問題があるのか。血圧が高い人の症状(動悸、息切れ、のぼせ、火照り)が有名で、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg未満(※1)でも、症状があれば高血圧の可能性はあります。
 たまたま病院で測って高かったから高血圧と判定されていませんか?単なる白衣高血圧(※2)ではありませんか?程度にもよりますが、緊張して血圧が上昇することは健全です。愛の告白をする直前は恐らく血圧は高いですが、それは健全です。大切なことは、日頃の血圧を把握していることです。

高血圧と診断された場合、まず、動脈がどのくらい硬化しているかを調べましょう。頸動脈超音波は直接動脈を観察する方法で、動脈硬化の程度が一目瞭然です。あとはABI(足関節上腕血圧比)やCAVI(心臓と足の血管指数)、BCチェッカー(指の毛細血管で測定する方法)などがあります。高血圧と心肥大があって体調に問題がある場合は、心臓の状況を把握する検査には意味がありますので、循環器内科へ相談するとよいでしょう。

(※1) 日本高血圧学会の指標では、収縮期140未満、拡張期90未満(単位mmHg)が標準血圧とされている。
(※2) 日常生活では正常血圧であるのに、病院、診療所、または健診の場において、医師・看護師などによって血圧が測定される時には、繰り返し高血圧を示すこと。

血圧の下げ過ぎ注意!

一方で、血圧を降圧剤で下げすぎたらどうなのかというと、血液が流れる圧力が低下しますので、流れは滞りやすくなります。もし、「血圧を上げておく必要がある」と身体が判断して高めに設定しているのに、降圧剤で無理やり血圧を下げられた場合は、何らかの体調不良をきたすことがあります。多くはフラフラして体に力が入らないという症状で、脳梗塞を誘発する場合もあります。(一部の薬剤添付文書に明記)

 降圧剤を使う場合、なぜ自分には必要なのかを主治医と充分に話し合って下さい。下げた方がいいからと鵜呑みにすることなく、なぜ、いま降圧剤を使ってまで血圧を下げることが必要なのかを知りましょう。

 

農作物に豊富に入っている抗酸化物質と良質なミネラルを摂ろう!

では、血圧の状態を健全に保つ方法とはなんなのか。ひとつは動脈硬化を進めないことです。動脈硬化は、酸化した脂質が血管内部へ蓄積することが問題です。これは高脂血症とも関係します。血液の酸化状況の是正が重要で、常に抗酸化し続けておくことが必要となります。

抗酸化物質が何に豊富に含まれているのかというと、良質な農作物です。特に野菜や穀類、種子類、海藻類はそれぞれに抗酸化物質を含んでいます。安価なサプリメントにお金をかけるのではなく、同じお金をかけるなら良質な食材へかけた方が身体としては安全安心でお得です。

 

生活にメリハリをつけよう!

もうひとつは血圧を調節している自律神経(交感神経、副交感神経)の安定化です。自律神経は心臓や動脈の働き具合を調節しています。それには生活のメリハリが重要です。朝に起床して日中は活動し、日が沈んだら安静に移行するメリハリです。一日中ぐうたら過ごして副交感神経ばかり優先していたり、家にまでバリバリ仕事を持ち込み、常に交感神経が緊張している状態では、身体のリズムをどこに設定してよいか分からなくなり、自律神経失調の状態になりやすくなります。

この自律神経の調節に関わる各種ミネラルの存在も大切で、種子類の摂取や良質な天然塩の利用を心がけましょう(心不全と腎不全の方の減塩は必要です)。当然、肥沃な大地で育った良質な農作物にも豊富なミネラルが含まれています。海藻にも豊富です。

 

適度な運動も必要。けど・・・・?

運動も高血圧によいとされていますが、「適度」が条件です。運動中の血圧は上昇しますが、同時に血液をたくさん流すため血管も開きます。血管が広がれば圧力は低下するので、運動直後の血圧は下がります。これは高血圧が改善したのではなく、単なる身体の仕組みによる変化です。身体が冷えたら血圧は上昇へ転じます。
 高血圧の方は血管の調整能力が乏しく、下がった血圧を戻す時に一気に上昇させることがあります。運動で大汗をかいてすぐにエアコンの冷たい風にあたることや、冬にお風呂で温まり、寒い脱衣所に出ることは避けてください。一気に血圧が上昇し、脳内出血の危機を招くことを忘れてはいけません。

では、適度な運動の「適度」とはなんでしょうか?気持ちよく汗をかけて、脈拍も130回/分までを越えない程度とお考え下さい。それ以上を「無理」といいます。ご自身の体調と相談しながら行いましょう。

運動をすれば血圧の大きな変化を招きますので、高血圧の方は運動と血圧の関係を知っておかねばなりません。最初のうちは運動前後はもちろん、休憩の前後も何度となく測定しましょう。

 

血圧を良好に保つには・・・

● 良質で栄養豊富な野菜を食べよう!
 野菜・穀類・種子類・海藻には血液の酸化を防ぐ抗酸化物質やミネラルが豊富!

● メリハリのある生活をしよう!
 日中は活動して、夜は安静にする。

●適度な運動をしよう!
 運動の前後と休憩の前後の血圧をチェック!

 
田中 佳 医師 / ドクターセラピスト
昭和60年に東海大学医学部卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て、市中病院で急性期医療に長年携わる。脳神経外科学会および抗加齢医学界の専門医となり、悪性脳腫瘍に関する研究で医学博士を取得。現在は、食や生活習慣、日用品、心の在り方など多岐にわたる方面から健康への道筋を広く発信している。著書、講演、オンライン講座多数。元日本脳神経外科学会認定専門医/日本抗加齢医学会認定専門医/直傳靈氣療法師/整膚師/ISBA(国際シンギングボウル協会)上級認定および認定プレーヤー/ホメオパス(クラシカル)
https://capybara-tanaka.com/
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