EM生活を楽しむ人々

農とつながり、いのちと向き合う

奈良盆地の南端、葛城山のふもとにある奈良県御所市。
色づき始めた山々に囲まれた畑で、収穫作業を行う西村章先生を訪ねました。開業医として働く傍ら、野菜とお米を10年つくり続けておられます。無農薬・無化学肥料にこだわり、食と農と医療(健康)に向き合う姿を取材しました。

取材日: 奈良県 西村章 医師【奈良県御所市】

食農医を志して

「僕が医者になった原点は、この本なんです。僕にとってのバイブルですね」と西村先生が見せてくださったのは、
(財)慈光会※1の梁瀬医師の名著「生命の医と生命の農を求めて」。昭和53年に出版されたこの本の中で著者は、医者として患者と向き合う中で、農薬や化学肥料の害に気づき、生命力を高めるためには生命力のある農作物が必要であると説いています。生命農法と名付けられたこの農法の具体的な方法論や、その農法に行きつくまでの様々な事例が書かれていて、とても35年も前に書かれた本とは思えない内容です。

西村先生は、京都大学工学部を卒業し、奈良県庁に勤務されていました。その頃にこの本と出会い、梁瀬先生の生き方に感銘を受け、29歳で医学部に再入学するという、異色の経歴の持ち主。そのやさしい笑顔の底には、梁瀬医師と同じ
“食農医”※2という道を志す実践者の強さが感じられます。

「医大を卒業後、7年間は救急救命センターで当直に明け暮れていました。今から16年前に大阪府大東市で仲間と独立し、それと同時に有機農業の研究を始めました。開院してから4~5年頃でしょうか、比嘉先生の『EMで生ごみを活かす(サンマーク出版)』の本を書店で見つけたんです。その時からずっと、EMを活用しています。無農薬・無化学肥料で野菜とお米を作っています。
健康のためには食べ物が一番大事。でも、今の食べ物は農薬や化学肥料、遺伝子組み換え、防腐剤等々、本当に安全な食べ物を手に入れるのがすごく難しい世の中になっています。やはり、他人に作ってもらっていてはダメですね。自分で食べるものは自分で作れるようにならないと」。


※1慈光会は、1959年(昭和34年)に、世界に先駆けて農薬の害に警鐘を鳴らした故梁瀬義亮(やなせぎりょう)医師が設立した財団法人。
※2病気の予防は食べ物に注意することが最善の策であるという、医食同源の考え方を持ち、実践する医者の意味。造語。
 
  • 畑で採れた、見事な野菜たち。10年間、無農薬・無化学肥料栽培を続けていらっしゃいます。
  • 「早く食べてー !」という声が聞こえてきそう。
  • 立派な大根。

EMがあれば、素人でもできる

「自分で食べるものは自分で作る」。これがいかに大切でいかに難しいことか、痛感している方も多いはず。西村先生は、開業医として忙しい時間を過ごしている合間をぬって、自分の畑で野菜を育てていらっしゃいます。

「EMを使って育てれば、素人でも簡単においしい野菜が育てられますよ」と、西村先生は笑顔で畑を案内してくださいました。ニンジン、サトイモ、白菜、大根、ネギ、玉ねぎ・・・週3日の作業で、ここまで見事な野菜を育てられるなんて!と驚いている取材スタッフに手渡されたのは、生命力あふれる香りいっぱいの抜きたてニンジン。

「EMを使って、無農薬・無化学肥料で野菜を育てると、野菜が本当においしい。私の野菜を食べた方に『ニンジンをゆでていた時、娘がにおいがいつもと違う!と言ったんですよ』と言われました。ゆげで伝わる香りで、ニンジンの違いがわかったようです。もちろん味も全然違います。自分で野菜を育てるようになって、10年経ちますが、ほとんどスーパーで買うことはないです。買うのはキノコ類くらいかな」。


 
大阪市大正区にある八坂神社の朝市に向けた出荷作業中にお伺いしました。
お手伝いは西村先生(左)のお母様の幸子(右)さんと奥様の美紀子(中央)さん。

朝市で健康野菜を販売

「野菜はほぼ毎週販売しています。医院隣にある別室での月2回の朝市、大阪市大正区にある八坂神社での朝市、そして、NPO法人東大阪市民環境会議主催の『えこ楽市』。東大阪市民環境会議は、EMボカシネットワークの岸隆美さんのつながりで集まっているボランティアグループです」。

2008年に大阪で開催された「よみがえれ!森・川・海」イベントで、西村先生が講演した際、先生は自分でつくられたEM野菜を持っていき、主催者メンバーのみなさんに配布しました。イベント主催側であった岸さんたちが、「この野菜おいしい!ほしい!ほな、朝市やろか!」と「えこ楽市」をスタート。

「えこ楽市」では西村先生の野菜の他にも、EMたまごやEM石けん等も販売されています。しかし、何と言ってもメインは西村先生の野菜。安全でおいしいのに、価格はおよそ100~150円。最初は、自由に買えるスタイルでしたが、あまりの人気ぶりに、混雑・取り合いが発生するように。今は整理券を配り、番号順に買い物ができるようなしくみになっています。この日(10月取材)は約15分で野菜が完売しました。

基本は予防医学 EM無農薬野菜が一番の薬

「私は開業医をしていますが、その中で、予防医学の大切さを伝えていきたいと思っています。本当は、ちょっとの病気なら、薬よりも私の野菜を処方したい(笑)。診療の中では色々な患者さんがいるので、積極的に食事指導をしているわけではありませんが、話の中で少しずつ、食の大切さに気づいてくださる方もいます。そうした方には、『旬のものを食べましょう』『野菜や5分づき米を食べましょう』とアドバイスしています。今は、旬を知るチャンスが本当に少ない。みんな、旬を知らないんです。

医院でも野菜を月に2回販売しているので、野菜の味の違いから、食事に気をつけるようになった方もいます。野菜の販売の所には、EMの説明も掲示しているので、EMを使って、自分で野菜づくりを始めた方もいます。

病院に来る前の段階からもっと、食と健康に向き合ってもらおうと、えこ楽市では不定期で健康をテーマにした座談会を開催しています。その中で、自分が実践しているEM農業も紹介しています。地道な活動だけれど、人の健康と地球環境をよくするために、無理せず続けていくつもりです」。

「健康生活宣言」21号に掲載
 
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